休日の朝、少し気になっていた床のほこりと、洗濯かごにたまった服。片づけたい気持ちはあるけれど、せっかくの休みを家事だけに使うのは少し惜しい。
そこで選ぶのは、掃除や洗濯にかかりそうな時間と同じくらいの、耳で楽しめる作品を一つ。
家事の時間に合う一本を選ぶ

今日は、洗濯機を回している間に床を掃除し、最後に洗濯物を干す。全部で三十分ほどだろうか。
再生時間を眺めながら、長編ではなく、短編小説や短めのエッセイを探す。短すぎれば家事の途中で終わり、長すぎれば続きが残ってしまう。欲しいのは、その日の作業時間にぴたりとはまる一本だ。
「これなら、干し終わる頃に聴き終えられそう」
作品が決まったら、洗濯機のスイッチを入れる。イヤホンを着けて再生ボタンを押せば、いつもの家事と一緒に短い物語も動き始める。
手は家事へ、意識は物語の続きへ

掃除機をかけ始めると、耳元では登場人物の声が聞こえてくる。椅子を少しずらし、テーブルの下までノズルを伸ばしているうちに、物語の景色が少しずつ見えてきた。
掃除機を動かす手とは別に、頭の中では物語の時間が進んでいく。
洗濯物を取り出し、ハンガーを並べている間も、耳元の語りは途切れない。シャツのしわを伸ばしていると、さっきのひと言が気になってくる。靴下をそろえる頃には、最初に抱いた登場人物への印象も少し変わっていた。
家事が急に好きになるわけではない。それでも、「まだこんなに残っている」より、「この先はどうなるんだろう」と思いながら手を動かすほうがいい。
家事をしているはずなのに、その時間が家事だけではなくなっていた。
片づいた部屋に、作品の余韻が残る

最後の一枚を干す頃、物語も結末へ近づいていく。
洗濯ばさみを留め、空になったかごを持ち上げたところで、最後の言葉が流れた。イヤホンを片方外し、静かになった部屋を見渡す。床はきれいになり、洗濯物も並んでいる。そこに、短い作品を一本聴き終えた余韻まで残っていた。
家事に使った時間は、いつもとほとんど変わらない。それでも、ただ作業を終えた休日とは少し違う。片づいた部屋と、心に残った一場面。二つの小さな達成感が、同じタイミングでやってくる。
次はどのくらいの長さにしよう。二十分のエッセイでもいいし、少し長めの短編もよさそうだ。
次の休日は、掃除や洗濯にかかる時間に合わせて、耳で楽しめる一本を選んでみよう。