夕食にステーキを焼くと、いつもの塩、いつものソース。そのまま最後まで同じ味で食べることも多い。
でも今夜は、一枚を少しずつ違う味で食べてみる。テーブルに塩やソース、薬味を並べて、「この肉なら、どれが好きだろう」と試してみる。
最初のひと切れは、塩だけで味わう

焼いたリブロースを切り分けて皿へ。すぐそばにはソースもあるけれど、最初のひと切れには手を伸ばさず、塩を少しだけ振る。
噛むと、まず肉の味がまっすぐにくる。
「これだけでもいいかも」
いつもなら、そのまま決まった味で食べ進めるところ。でも今日は、まだ皿の上に何切れも残っている。
次は何をつけよう。
最初に塩だけで食べた味が、次のひと切れを比べる基準になる。
ソースや薬味を変えると、同じ肉の印象も変わる

次のひと切れには、いつものソースを少し。その次には、用意していた薬味を合わせてみる。
さっきまでと同じ肉なのに、口に入れたときの印象は少しずつ違う。
ソースを合わせたあとで塩だけに戻ると、赤身の味がさっきよりはっきりする。今度は薬味を少し。合わせるものを変えるたび、同じ肉の違うところに目が向く。
二人なら、ここで言葉も出てくる。
「私は塩のほうが好き」
「こっちはソースかな」
答えを決める必要はない。相手と好みが違っても、それも食べ比べのひとつになる。
一人なら、気になった組み合わせをもう一度。今度はソースを少なめにしてみたり、塩に戻ってみたり。
食べ比べながら、自分の好きな味が見えてくる

何通りか試したあと、最後に手が伸びたのは最初に食べた塩だった。
あるいは、途中で合わせたソースかもしれない。
ステーキは、焼いたところで味が全部決まるわけではないらしい。ひと切れずつ変えてみると、最後には自然ともう一度食べたい味へ手が伸びる。
大げさな準備はしていない。いつもの夕食に、塩とソースと薬味が少し並んだだけ。
皿に残った最後のひと切れ。さて、どの味でもう一度食べよう。
次にステーキを焼く夜は、最初のひと切れだけ、まず塩で。
そのあとはいつものソースや手元の薬味をひとつずつ。食べ終わるまでに、自分の好きな食べ方をひとつ探してみる。