夜、洗面台の前に親子で並ぶ。手に取ったのは、親にとってはどこか懐かしく、子にとっては初めて見る洗顔シリーズだ。
「これ、昔もあったの?」
そんなひと言から、いつもの洗顔時間が少しだけ違うものになっていく。
「昔はどんな感じだった?」から始まる親子の洗顔時間

「ミルキュアって、前から知ってる?」
そう聞くと、母が「あったよ。ずいぶん前から」と答えた。普段なら洗顔料を前にして、昔の話を聞くことなんてほとんどない。
けれど、長く続いてきたシリーズを今の自分たちが一緒に使うとなると、少し気になる。
「そのころも、毎日使ってた?」
「どんな化粧品が流行ってたの?」
最初は洗顔料の話だったのに、少しずつ質問が増えていく。
母にとっては知っている名前でも、目の前にある「ミルキュア ミー」は新しくなったもの。母には懐かしく、こちらには新しい。その違いが、昔のことを聞いてみるきっかけになった。
昔と今の違いを比べるうちに、当時の思い出まで話が広がる

今の「ミルキュア ミー」を使おうとすると、手に取るのはウォッシュとパウダーの二つ。手のひらで混ぜ始めると、母が「昔はこうだったかな」と考え込んだ。
その様子がおかしくて、「じゃあ今のほうは一緒にやってみよう」と並んで混ぜてみた。
母が知っている昔のシリーズと、こちらが初めて使う今の「ミルキュア ミー」。同じ名前につながるものでも、二人が見ているものは少し違う。
そこから話は、昔使っていた化粧品のことへ。洗面台に何を並べていたか、どこで買っていたか、そのころはどんな髪型にしていたか。
「そんなの使ってたんだ」
初めて聞く話が、ぽつぽつ出てくる。
こちらが知りたかったのは洗顔料の歴史ではなく、もしかすると、こういう何気ない昔話だったのかもしれない。正面から「若いころの話をして」と言うより、手を動かしながらのほうが、ずっと聞きやすい。
いつもの洗顔が、まだ知らなかった親の話を聞くきっかけになる

洗顔を終えても、話はすぐには終わらなかった。
タオルで手を拭きながら、「そういえばね」と母がもう一つ思い出す。さっきまで洗顔料を置いていた洗面台が、そのまま昔話の続きの場所になっている。
何か特別な予定を立てたわけでもない。写真を見返したわけでも、思い出話をしようと決めて集まったわけでもない。
ただ、昔から続いているものを、今の形で一緒に使ってみただけ。
それでも、知っているつもりだった人から、まだ聞いたことのない話が出てくることがある。
身近なものに「昔と今」が重なっていると、世代の違いは距離ではなく、話題になる。次に同じ洗面台に並ぶときは、また別の話を聞いてみたくなりそうだ。
次に親や家族と過ごすときは、昔から続いている身近なものを一緒に使いながら、「昔はどんなふうに使っていた?」と聞いてみよう。思いがけない話が始まるきっかけになるかもしれない。