離れて暮らす家族とは、たまにメッセージを送ったり、電話をしたりする。近況は知っていても、普段の夕食まで一緒にすることはなかなかない。
そんな家族とのやり取りの中で、ふと「今度、みんなで同じ日にカニを食べない?」と送ってみる。集まる予定ではなく、合わせるのは夕食の日だけ。それなら、少し気軽に決められそうだ。
離れて暮らす家族と「同じ日にカニ」を予定にする

「来週の土曜なら大丈夫」
「夜なら家にいるよ」
家族のグループメッセージに返事が続き、思ったよりすんなり日が決まった。旅行や帰省の日程を合わせるときほど、話は複雑にならない。
次は、何を食べるか。
それぞれの家に届くカニを通販で眺めているうちに、「ずわい蟹にする?」「たらば蟹も気になるね」と、今度は食べるものの相談が始まった。
普段ならそれぞれで決める夕食を、離れた家族と一緒に選んでいるのが少しおもしろい。
カレンダーには、土曜日の夜にひとこと。
「みんなでカニ」。
大げさな予定ではないのに、その文字があるだけで、いつもの週末とは少し違って見えた。
別々の食卓から写真を送り合うと、同じ夜が始まる

土曜日の夕方。こちらの食卓にカニを並べたころ、スマートフォンに一枚の写真が届いた。
「こっちはもう準備できたよ」
見ると、実家のテーブルにもカニが並んでいる。少し遅れて、きょうだいの家からも写真が届いた。
「そっちはもう食べてる?」
「今から。思ったより大きい」
そんな短いやり取りをしながら、自分の皿にもカニを取り分ける。
画面の向こうにも、同じようにカニが並んでいる。別々の食卓なのに、今夜だけは少し近い。
途中で電話をつなぐと、「こっちはこうやって食べてる」「それもおいしそう」と話が続いた。いつもの近況報告より、目の前に話題があるぶん会話も軽い。
カニを食べるだけでなく、それぞれの食卓を見比べる楽しみまでできている。
「次は違う種類にしてみる?」
食べている最中から、そんな話まで出てきた。
集まらなくても、食べる日を合わせれば家族の時間になる

食べ終わったあと、グループメッセージには何枚かの写真が残った。食卓全体を写したもの、途中まで食べた皿、妙にきれいに身が取れた一本。
「ごちそうさま」
「またやろう」
短いやり取りで、その日の予定は終わった。
誰かが遠くまで移動したわけでもないし、一日を空けて集まったわけでもない。それぞれが自分の家で夕食を食べただけ。それでも、「今日は家族で何かした」という感じが少し残っている。
食べるものと日を合わせる。それくらいなら、次も予定にできそうだ。
次はずわい蟹にするか、たらば蟹にするか。そんな話をしながら選ぶところから、もう次の時間は始まるのかもしれない。
離れている家族と何かしたくなったら、まずは予定を大きく考えなくてもいい。
「今度、みんなで同じ日にカニを食べない?」
そんな一言を送ってみて、返事が来たら、今度は「何にする?」と一緒に選んでみる。