元日の食卓に並んだおせちを、親子4人で囲む。いつものように好きなものへ箸を伸ばすだけでも楽しいけれど、今年はひとつだけ遊びを加えてみる。
「最後に、一人ずつ今年の一番を決めよう」
それだけで、重箱を見る目が少し変わってくる。
「今年の一番」を考えながら、おせちを少しずつ味わう

「これ、去年も好きだった気がする」
そんなことを言いながら、それぞれ気になった料理を取り皿へ。最初から一番を決める必要はない。ひと口食べて、次の料理へ。また気になるものがあれば戻ってみる。
料亭監修のおせちには、味わいも見た目も異なる料理がいくつも詰まっている。煮物を選ぶ人もいれば、魚料理に箸が伸びる人、甘い一品が気になる人もいる。
「こっちも好きだけど、あれも捨てがたい」
ひとつ選ぼうとすると、さっき食べた料理が気になって、もう一度箸が伸びる。普段なら好きなものから食べていた重箱が、今日は少し違って見える。
「これ、思ったより好きかも」
食卓のあちこちから、そんな小さな発見が聞こえてくる。
一人一品を選んでみると、家族の好みの違いが見えてくる

食事が少し進んだところで、いよいよ一人一品。
「じゃあ、今年の一番は?」
最初に選んだ人の答えを聞いて、「え、それなんだ」と声が上がる。自分なら別の料理を選ぶと思っていただけに、ちょっと意外だ。
子どもが選んだのは何度もおかわりしていた一品。もう一人は、最初はあまり手をつけていなかった料理を挙げた。
「最後に食べたら、これが一番好きだった」
理由まで聞いてみると、さらに面白い。味つけが好き、食感がいい、普段あまり食べないから印象に残った。選ぶ基準まで、きれいには揃わない。
同じ重箱を囲んで、同じ料理を食べていたはずなのに、それぞれの一番は違う。
「じゃあ二番目は?」
「それ、そんなに好きだった?」
一品を選んだだけなのに、食卓の話題がもう少し続いていく。
選んだ一品から、家族の意外な好みを知る

全員の一番が出そろうころには、重箱の中もずいぶん減っている。
「こういう味が好きだったんだ」
毎日一緒に食事をしている親子でも、改めて聞かなければ知らない好みは意外とある。いつもよく食べるものではなく、今日初めて気に入った一品が選ばれることもある。
誰が何を選んだのか分かってくると、「こっちはお父さんが好きそう」「これはまた食べたいね」と、残った料理を見る目まで少し変わる。
来年またおせちを囲んだときには、「去年はこれが一番だったよね」と思い出すかもしれない。
その年の重箱にいろいろな料理が並んでいたからこそ、4人それぞれに違うお気に入りができた。食べ終わったあとに残るのは、おいしかった一品だけではなく、「誰が何を好きだったか」という小さな記憶だ。
次に家族でおせちを囲んだら、食べ終える前にひと声。
「今年いちばん好きだった一品、どれ?」
それだけで、いつもの食卓から意外な答えが返ってくるかもしれない。