年末年始や休日、家族がそろう日の夕食。せっかくみんなが集まるなら、いつもより少しだけ特別にしたい。でも、何品も料理を作ったり、何か催しを考えたりするのは大変だ。
そんな日は、食卓の真ん中に大きな一皿を置いてみる。今日の主役は、みんなで囲むカニだ。
食卓の真ん中にカニを置くと、いつもの夕食が少し特別になる

テーブルの中央に、大皿いっぱいのカニを置く。
それだけで、席についた家族の視線がひとつの場所に集まった。
「おお、今日はカニだ」
誰かが声を上げれば、それをきっかけに食卓の空気も少し変わる。豪華な飾りつけがあるわけでも、特別な献立が何品も並んでいるわけでもない。それでも、普段の夕食とは違う日が始まったような感じがする。
半むき身や肩脚が大皿いっぱいに広がっていると、最初からひとりずつ取り分ける必要もない。「どれにしよう」と、それぞれが真ん中へ手を伸ばす。
今日は、自分の皿の中だけではなく、みんなで囲む一皿から始まる夕食だ。
みんなでカニに手を伸ばすと、食べる時間そのものが楽しくなる

「これ取っていい?」
「そっちの脚、大きくない?」
大皿を囲んでいると、食べ始める前から小さなやり取りが生まれる。
好きな脚を選ぶ人。じっくり殻をむく人。きれいに身が取れて、思わず隣の人に見せる人。普段ならそれぞれ自分の皿を見ながら進む夕食も、今日は誰かの手元が少し気になる。
黙々とカニに向き合っていたかと思えば、不意に会話が始まる。食べる速さも、きれいなむき方も人それぞれ。
「それ、きれいに取れたね」
そんなひと言から、また次の会話が続いていく。
何かを企画しなくても、ひとつの大皿が家族のイベントになる

食事が進むころには、大皿の上もずいぶん軽くなっている。
さっきまで山のように並んでいたカニを見ながら、「よく食べたね」と笑う。ゲームをしたわけでも、特別な出し物があったわけでもない。それでも、食べ終わるころまで話が途切れず、いつもの夕食より少し長く席に残っている。
テーブルの真ん中には、食べ進めたカニの大皿。
家族で何かをする日ではなく、同じものを囲んで食べた日。そんな夕食も、あとから思い出すひとつの出来事になりそうだ。
次に家族がそろう日は、食卓の真ん中にどんなカニを置こうか、家族の顔を思い浮かべながら選んでみる。