自宅で生そばを食べる日は、ゆでて、冷水で締めて、器に盛る。いつもなら食事の準備として進めるその工程も、少し意識を向けると見え方が変わる。
職人が打った本生そばを、最後は自分の手で仕上げる。食べる前の短い時間まで含めて楽しんでみる。
ゆでて締める時間が、「一杯を仕上げる時間」に変わる

鍋の湯が沸いたら、本生そばを入れる。ここから先は、自宅で食べる人の仕事だ。

ゆで上がったそばをざるに上げ、すぐに冷水へ。水の中でそばを締めていくと、さっきまで鍋の中にあったそばが、食べる一杯へと近づいていく。
職人が打ったそばでも、そのまま食卓に並ぶわけではない。ゆでるところから先を自分で行うからこそ、「あとは食べるだけ」ではなく、「ここを自分で仕上げている」という感覚がある。
普段なら手早く終わらせたい調理の時間でも、このときは少しだけ手元に意識が向く。ゆでて、締める。やることは難しくない。それでも、いつもより一つひとつの動作を意識している。
器に盛って味わうと、調理まで食事の楽しみに思えてくる

冷水で締めたそばの水気を切り、器へ盛る。そこでようやく、一杯のそばとして形が整った。
目の前に置くと、さっきまで自分がゆでていたそばだと改めて分かる。
箸を取って食べ始めれば、特別な作法があるわけではない。ただ、「自分で仕上げた一杯を食べている」という感覚は、いつもより少しはっきりしていた。
そばを食べる時間だけでなく、その前の数分も楽しめる。そう考えると、ゆでる作業もただの準備ではない。
生そばを自宅でゆでる機会があれば、次は盛りつけるまでを急いで済ませず、一杯を自分で完成させるつもりで手を動かしてみる。
食べる前の短い工程まで意識してみると、いつものそばにも、もう一つ楽しめるところが見つかる。